修行者と魔物

餓えた魔物に捕われた修行者
魔物は獲物を喰らおうとする

しかし修行者、動じることなく
喰われる前に懇願したのは神への祈り
死に際し思い起こすは神のこと

額ずきてあふるるは師への思い

幸せだった師とのひととき
楽しかった仲間とのひととき
懐かしきは師から言い付かった仕事に追われた日々

また、思い起こすは神からの祝福
豊かではないが満たされた暮らし
良心にしたがった生き方
至福の時感じた純粋な愛
大自然から受けた優しさ

やがて彼の魂はやすらぎを覚える

静寂のなか瞼を開ける
もはや思い残すところなく
喰われることに未練なし

ところがどうしたことか魔物の目には涙
さては魔物、修行者の想念を読み
己の心の琴線に触れ
感涙に咽んでいるものとみえる

魔物、涙ながらに申すことには
貴殿の邪魔立てはもうしない
悪者に捕まらぬよう無事を祈ると言う始末

心入れかえし魔物の姿は
はかなき大気の中へと消えてゆく
思い出したる神のこと
誠に行者よ、礼を言うぞ
何処からか声だけが響いた

生きとし生けるものみな心中に善宿る