マスターの話す物語
恐怖の背後にある真理を見る
禅の幽霊話
スプリームマスター チンハイ アメリカ・テキサス
オースチンセンター共修会1994.8.14(英語)ビデオテープ 439
今夜は、みなさんの勇気をテストするために怪談をしましょう。今夜みなさんは眠れるでしょうか。そうすれば、みなさんに勇気があるかどうかわかりますね。
さて、非常に若く美しい妻がいました。彼女は病気になり、瀕死の状態でした。彼女は死の床で夫に言いました。「私はあなたのことをとても愛しています。あなたのもとを離れたくありません。どうか、私が死んでも他の人と結婚しないでくださいね。約束してください。いいですね」。
彼女は夫がその約束を守らないかもしれないと心配しました。それで彼を脅して、「あなたが他の人と結婚したら、私は幽霊になってずっとあなたに付きまとって、永遠にあなたを苦しめますからね」と言いました。恐いですね。そういうふうに彼女は夫に言ったのです。それで夫は妻を恐れていたのかもしれません。けれども、この本には妻を尊重していたと書いてあります。私たちは常に妻を尊重しています。そうではないですか。普通の人は妻を尊重していますが、恐れたりはしません。ですから、この夫は妻の遺言を尊重し、他の人と再婚するなんて考えもしませんでした。
けれども、神は常に人に問題を引き起こすようです。彼は別の、もっと若く、かわいく、もっと優しく、魅力的で、もっと金持ちの美しい女性に会ってしまいました。金持ちです。さあ大変です。その上、彼女は彼を本当に愛していました。前妻以上だったかもしれません。ああ、ひどすぎますね。前妻の葬式からまだ三ヵ月もたっていないのです。いったい、私たちに何かできるでしょうか。
それで、彼は彼女と婚約をしました。婚約は昼間行われ、その夜になると、夫は妻が幽霊になってやって来るのを見ました。彼女は彼の前に現れ、「さあ、約束どおりやって来ましたよ」と言うと、彼を怒りました。彼が約束を守らなかったとか、彼女を愛していなかったとか、誠心誠意ではなかったとか、悪い夫だとか、良心のかけらもないとか、ひどい男だとか、ひどい人間だとか、観音法門を修行する徳もない、というようなことをガミガミ言ったのです。
それで、夫はとても恐くなってしまいました。この幽霊は本当に恐ろしいほど頭が良く、夫と新しい婚約者の間に起ったことは、何でも間違いなく知っていたからです。何時に彼が彼女と何をしたとか、何時に彼が彼女に何をあげたとか、どういうことを彼女に話しかけたか、など話して見せたからです。幽霊は何でも知っていました。すべてです。それで、彼は幽霊を拒むことができず、とても恐れていました。
彼はとても恐くなり、眠ることも、食べることもできなくなってしまい、あえて頻繁に婚約者に会いに行くこともしなくなりました。二人の愛の関係はほとんど暗礁に乗り上げてしまったようでした。すると、ある人が彼に、禅師なら助けられるかもしれないから、お寺に行って、悩みを話してみたらどうかと言いました。何ということでしょう。禅師というのは、どんな面倒でも見るのですね。幽霊や結婚の問題までも処理するのです。
そして、その禅師は本当に彼を助けました。彼は夫に言いました。「あなたの前妻は幽霊になっています。(みんな知っていますよ) その上、彼女は異常なほど頭がいいのです。それで、彼女はあなたが婚約者としたことは何でも知っています。本当なら、あなたはこのような幽霊を尊重すべきなのですが、彼女を追いやる方法は一つあります。この次幽霊が現れたら、必ず彼女と賭けをしてください」。禅師は、彼女は何でも知っていると言いました。すでにあまりにも多くのことを知りすぎています。けれども、たぶん何か彼女が知らないこともあるかもしれません。正しく答えられなければ、彼女は戻って来られなくなり、これ以上彼を悩ますことはできません。そうすれば、彼は愛する人と結婚することができるのです。
彼女は死んでいるのですから、どんな形であれ、彼に尽くすことはできません。彼のために料理をすることも、面倒を見てあげることもできないのです。そこで、夫は禅師に尋ねました。「私に何ができるでしょう。彼女に何と聞いたらいいでしょうか」。
すると、禅師は彼に言いました。「今度彼女がやって来たら、ひとつかみの緑豆をとって、手の中に豆が何個あるかと聞きなさい。間違いなく彼女には答えられないでしょう。そうすれば彼女は姿を消します。彼女がその質問に答えることができなければ、その幽霊は単にあなた自身の頭脳、良心、あるいは想像力が作り出した幻だということがわかるでしょう。あなたはあまりにも怯えきってしまって、恐怖心で死んだ妻の幻を創造してしまっているからです。彼女が答えられなければ、それが幻であることがわかるでしょう。幽霊は消えてしまいます」。
そして、次の日の夜、本当に幽霊が姿を現しました。夫は彼女に言いました。「ああ、そうだ。おまえは何でも知っている。とても賢くて、私にはどうすることもできない」。すると、幽霊は、「ええ、知っています。それに、あなたが今日、禅師に会いに行って、私たちのことを相談したことも知っています」と言いました。
そこで、彼は言いました。「よし、おまえは何でも知っているのだから、今、私の手の中に豆が何個あるか言ってごらん」。彼がこう質問した瞬間、幽霊は姿を消してしまいました。
おわかりですね。本当の幽霊などいましたか。いいえ。ではみなさん、今夜は恐がってはいけませんね。